"明るい笑顔 豊かな老後"

社会福祉法人 会津長寿園

☎ 0242-27-1797

長期経営計画

1.計画策定の趣旨

会津長寿園(以下「園」という。)の財政収支は、介護報酬の引き下げや措置費収入の伸び悩み等により状況的に厳しいものがあり、平成25年度から27年度まで3年間連続して赤字が続きました。

園は、行政の措置に基づき、経済的及び環境上の理由から自宅で生活することが困難な方を入所させ、その方が自立した生活を送れるよう支援していく施設です。また、ショートステイ事業やデイサービス事業も行っており、これまで会津地方における高齢者福祉の拠点施設として機能してきました。さらに、若松第三地域包括支援センター業務を会津若松市から委託され、地域福祉の拠点としての機能も担っております。

このような機能については、園として維持・向上させ、会津地域における重要な施設として、将来にわたり大きな役割を果たしていく必要があります。それを可能にするためには、運営を下支えする持続可能な強固な財政基盤を構築しなければなりません。そして、園の未来のあるべき姿を描き、そこに向かって一歩ずつ取り組みを進めていくことが、園の存続につながるものと考えます。

このような考えから、将来を見据えた長期的な経営計画を作成し、職員一丸となって将来の園のあるべき姿を目指し、この厳しい状況を乗り越えていくことを目的とするものです。

2.10年後のありたい姿

理想とする園の経営の姿・形は一朝一夕にはできません。一歩ずつ階段を上っていく必要があります。そこで、現時点での園の10年後のありたい姿を、次の二つの姿とします。

  1. 養護老人ホームとして、持続可能な強固な財政基盤を構築し、利用者の安全・安心な生活を支援するとともに、不断に利用者サービスの向上に努めている会津長寿園
  2. 地域における高齢者福祉の拠点として、これまで培ってきた園の知識と技術を地域住民の皆様へ提供するとともに、困っている住民の方の総合的な相談窓口として、また、困っている方を支援するため各種機関、組織を取りまとめるコーディネーターとして住民から信頼を寄せられている会津長寿園

3.取り組み項目と基本的な考え

(1)持続可能な強固な財政基盤の構築

① 設備整備積立金のあり方

園は、150名の利用者が日常生活を送っている施設で、延べ床面積約1,900坪の建物です。平成6年に建設されてから23年が経過し、機械・設備等の劣化も進んでいます。これまで、ボイラーや電気設備の更新工事、さらには屋根と外壁の大がかりな改修工事を行うなど、施設の維持に努めてきました。

(主な改修工事の内容)(単位:円)

改修年度 改修項目 改修費用
平成19年度 会津長寿園外部手すり等塗装改修工事 2,499,000円
平成21年度 会津長寿園暖房・給湯システム改修工事 33,600,000円
平成22年度 会津長寿園トイレシステム改修工事 2,940,000円
平成24年度 会津長寿園陸屋根部防水改修工事 15,225,000円
平成25年度 会津長寿園外部大規模改修工事 65,100,000円
会津長寿園ネットワークカメラ設置改修工事 970,095円
平成26年度 会津長寿園電話交換機取替工事 2,494,800円
平成29年度 会津長寿園医務室改修工事 916,164円
会津長寿園洗濯室改修工事 7,525,440円
会津長寿園受変電設備更新工事 7,400,000円
会津長寿園職員通用口新設工事 2,089,800円
会津長寿園ナースコール改修工事 9,400,000円
合計   150,160,299円

仮に、園の経営に損失が出続ければ、将来必要となる改修工事等の財源が確保できず、利用者の生活も守れなくなります。利益を生み出し、それを積み立てることで年度間の費用の平準化を図るとともに、その積立金を活用し適宜適切な時期に改修工事等を行うことができます。それが結果して利用者の生活を守ることにつながります。

持続可能な強固な財政基盤を構築していくため、毎年度の利益のうち適正な額を設備整備積立金に積み立てることとし、その目標額を次のとおりとします。

(園創設当初の固定資産の取得価額 × 10パーセント = 約2億円)

なお、この目標額は最終的なものであり、10年後の平成39年度決算終了後の積立金の目標額は、これから予定される工事へ活用した後の額で1億円とします。

(設備整備積立金の活用が予定される主な工事)(単位:円)

改修年度 改修項目 改修費用(概算)
平成31・32年度 会津長寿園浴室改修工事 50,000,000円
平成33年度以降 給食室(食堂・厨房)改修工事 30,000,000円
小型昇降機(給食用)改修工事 1,000,000円
平成35年度以降 床改修工事 5,000,000円
合計   86,000,000円
②園の8事業の方向性と利益額の目標値

園全体で単年度黒字を目指し、投下経費(事業費+事務費+人件費)の2パーセントの利益額を目標とします。また、8つの事業のうち単年度赤字が複数年続く場合については、廃止も視野に改善策を検討します。

なお、8つの事業の現状と課題、今後の方向性については次のとおりです。

ア〈養護老人ホーム事業〉

目的
一人での暮らしがままならない方や病院から退院後の行き場のない方の受け皿的存在ですが、入所された方々が豊かな生活を送られるようお手伝いしていきます。
課題
入所者の高齢化・介護度の重度化・精神的弱者の増加が著しく業務に追われる日々。入所者や職員間でもコミュニケーションが取りづらい現状です。
今後の方向性
特養化してしまった養護は本来の「自分で出来る事は自分で」に戻るべきです。そして地域の方々との交流の場を設ける等、自立した楽しい生活が送られる施設にしなければなりません。

イ〈短期入所事業〉

目的
利用者の心身機能の維持とご家族の身体と精神的負担の軽減を目的とします。現状は利用者家族のニーズと、受け入れる園の体制にひらきがあります。
課題
サービスの多様化で、様々な在宅サービスを使いながら、ショートステイも単発で利用される方が多く、以前のようにショートステイをメインとして利用されなくなりました。
今後の方向性
入居者とショートステイ利用者のフロアを分けて、職員も専属にし、独自のプログラムで結果の出せるリハビリを行いたいのと、泊まってよかったと利用者とご家族にも思われるシステム作りを目指したいです。

ウ〈デイサービスセンター通常規模型〉

目的
(温かく・安心)をモットーに、地域のみなさまの憩いの場として、張り合いのある、充実した在宅生活が送れるよう支援します。
課題
お風呂場までが遠いという意見も多い。入浴の回転率も悪く、余計に職員を必要とする一方、いまどき、この様に大きなお風呂はなく、見晴らしも含めて、満足の声も聞かれている。
今後の方向性
当デイサービスの特徴になっている、お財布に優しいデイサービスとしての継続。外部利用者を8割に増やし、安定した収入を目指したい。

エ〈デイサービスセンター認知症対応型〉

目的
(温かく・安心)をモットーに、利用者様が住み慣れた家で暮らしていけるよう、ご家族様を支え、地域と一体となって生活をサポートしていきます。
課題
お風呂場までが遠い。また浴室も広く、入浴も大人数となってしまい、利用者さまの戸惑い、不安に繋がってしまう。
今後の方向性
職員の専門的知識・技術の向上を元に、地域に開かれ、信頼される事業所として、外部の利用者を増やしたい。

オ〈訪問介護事業所〉

目的
要介護認定を受けた方に対して、個人の状態を把握し、必要なサービスを適切な量で提供し、自立した生活が送れるように支援する。
課題
精神的弱者や介護度の重度化等により、通院介助が必要な方が増加している。通院日時等の調整等行っているが、現状では対応しきれていない。
今後の方向性
利用者の状態や介護量、ヘルパーからの情報をもとに、随時適切なサービスの提供ができる体制を整えていく。

カ〈特定施設入居者生活介護事業所〉

目的
養護老人ホームの入所者のうち、要介護・要支援と認定されている方一人ひとりに合わせた介護サービスを提供する事業である。
課題
介護度は軽度であっても、入所当初より常に介護が必要な方が年々増加。外部サービスの提供体制(特に訪問介護)の不足もある。
今後の方向性
入所者の多様なニーズに対応できる体制が必要。
職員の教育体制を整え、資質・力量の向上を図り、入所者へのより良い支援へとつなげていく。

キ〈居宅介護支援事業所〉

目的
居宅で介護を必要とされている方(要介護1~5の方対象)に対し、ケアマネジャー(介護支援専門員)がその方に合ったサービスが利用できる様、ご相談から手続き、サービスの紹介、ケアプラン(介護サービス計画)の作成等を行います。
課題
お独り暮らしや夫婦のみで生活している高齢者、認知症が進んでいく方々がさらに増え、家族の介護負担も大きくなる事が予想されています。
今後の方向性
介護が必要な方々とそのご家族が笑顔の多い毎日を過ごせるよう、毎月のモニタリングを通して現状の確認・見直しを行っていくとともに、地域との交流をさらに深め、多種多様な社会資源のコーディネートやネットワークを構築した環境づくりを推進し、ご本人様・ご家族様のニーズに合わせた、より質の高いサービスが提供できるよう努めて行きたいと思います。

ク〈地域包括支援センター〉

目的
地域包括支援センターは、地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉増進を包括的に支援することを目的としています。
具体的には、門田・城南・大戸小学校区の高齢者ができる限り住み慣れた家に住んでいられるよう様々な相談に対応します。町内会や老人会・サロン等で健康教室や講座等を無料で開催し、介護予防に協力します。
課題
会津地域の高齢者の割合が県全体より増え、1人暮らし・高齢者世帯の割合も増えています。そのため足腰が弱る人や認知症になり介護保険を使う人も増えてきました。しかし、介護保険サービス等は財政面から利用が厳しくなってきています。
今後の方向性
誰もが何でも相談できる、何かあれば第3包括にと相談できる「総合相談窓口」として、介護保険を使わなくても住み続けられる地域作りを、地域の皆さんと一緒にしていきます。

(2)利用者サービスの向上

園の基本理念には「社会福祉法人会津長寿園では、利用者第一のつねに優しく、安らぎと潤いにあふれるサービスの提供に努めます。」とあります。利用者へのサービスについて、不断にサービスの内容や質の向上を図っていく必要があります。利用者ひとり一人から園の提供するサービスに対し評価をしてもらい、それを目に見える形で数値化します。そして、数値化された評価を基に、職員で構成する既存の委員会を活用しサービスの改善や向上策を検討します。

(3)職員の能力向上

園では、80余名の職員が利用者の日常生活を支えるため、食事や入浴、排せつ等の支援・介助を行っています。職員の果たす役割は多大であり、職員の能力を向上させていくことがサービスの内容や質の向上につながっていきます。そのため、別途「人材育成計画」を策定し、職員の能力向上を計画的に進めていきます。

(4)職員人件費の割合

園では、平成25年度から平成27年度まで3年連続して赤字となったため、平成28年度から職員人件費も含め経費の削減に取り組んでいます。

職員人件費としては、定期昇給額の75パーセントカット、4年かけての資格手当の廃止、管理職手当の削減、期末手当・勤勉手当の2年間の削減と、働く職員にとって大変厳しいものとなっています。

(職員人件費の削減内訳)(単位:円)

支給項目 年度 改正前 改正後 減額・削減額 備考
本俸 平成28年度 114,613,700 112,778,900 1,834,800 対象延べ41名
平成29年度 119,374,500 116,163,000 3,211,500 対象延べ41名
管理職手当 平成28年度 1,140,864 960,000 180,864 対象延べ4名
平成29年度 1,337,488 1,160,000 177,488 対象延べ5名
主任・副主任手当 平成28年度 756,000 378,000 378,000 対象延べ12名
平成29年度 0 0 0 29年度以降廃止
資格手当 平成28年度 3,712,000 2,784,000 928,000 対象延べ40名
平成29年度 3,984,000 1,992,000 1,992,000 対象延べ45名
平成30年度 4,032,000 1,008,000 3,024,000 対象延べ42名
(※29年11月職員数で計上)
期末手当 平成28年度 48,669,670 46,236,125 2,433,545 対象延べ50名
平成29年度 48,706,309 46,270,933 2,435,376 対象延べ53名
合計       16,595,573  

今後、措置費や介護報酬のさらなる削減が予想されている状況において、削減されたものを元に復元していくことは極めて困難です。なお、定期昇給額のカットについては、職員の勤務意欲の減退や離職につながる恐れがあるため、今後の財政状況を勘案しながら判断します。

また、職員数も削減し職員人件費の抑制に努めてきました。職員人件費は義務的経費(固定費)であり、収入に対するこの割合が高くなれば財政は硬直してしまいます。そのため、収入(措置費収入+介護保険料収入+受託収入)に対する職員人件費の割合を65パーセント以内に抑えることを目標に、財政の柔軟性を維持していきます。

なお、別途「職員採用計画」を策定し、計画的に職員数の管理を行います。

(過去の職員数と職員人件費の割合)(単位:円)

年度 職員数
(正規職員、有期職員)
人件費 収入額 人件費の割合
平成23年度 86名(61名、25名) 319,475,570 478,331,941 66.79%
平成24年度 89名(59名、30名) 326,030,283 486,604,979 67.00%
平成25年度 91名(59名、32名) 334,494,706 485,638,657 68.87%
平成26年度 90名(56名、34名) 347,085,514 483,452,936 71.79%
平成27年度 85名(54名、31名) 337,601,807 483,386,513 69.84%
平成28年度 81名(52名、29名) 323,572,405 478,285,608 67.65%

(5)事務事業の見直し

①業務の改善

これまでの業務の進め方にこだわらず、合理的、効率的、合法的な視点から日常業務を見直し、ムダなもの、ムリになっているもの、過剰となっているものなどについては改善策を検討します。また、現場で働く職員が気付いたこと、それに対する意見などを提案できるよう別途「職員提案制度」を策定し、自由にアイデアや意見が言い合えるコミュニケーション活発な組織作りに努めます。

②情報公開制度の制定

園の業務及び財務等に関する書類の公表は、現状において一部書類 の閲覧とホームページでの公表です。閲覧は、社会福祉法第44条第4項の規定に基づき、事業報告書、財産目録、貸借対照表、収支計算書、監事の意見を記載した書類を事務所に備え置き、福祉サービスの利用を希望する者その他の利害関係人から請求があった場合、閲覧に供するものとされています。公表は、国の通知に基づき現況報告書、貸借対照表、収支計算書をホームページで公表することが義務づけられておりますが、これら以外は情報公開についての法令等の定めはありません。

社会福祉法人は公益性の高い非営利法人であり、公金も支出されて いるところから、その運営の透明性を確保していく必要があります。このようなことから、園の運営について透明性と信頼性を高め、園が提供するサービスを安心して利用できるよう、園としての情報公開制度の制定を検討していきます。

(6)地域に開かれた施設として

①地域への還元

園は昭和3年に創設され、会津若松市在住の高齢者のみならず他町村在住の方々も受け入れてきました。高齢者の方々が安全・安心に日常生活を送れる施設として、また、会津地域における高齢者福祉の拠点施設として大きな役割を果たしています。

在宅での介護が増えてきている状況において、将来の園のあり方としては、養護老人ホームとしての役割を果たすだけでなく、これまで培ってきた知識や技術を広く地域に開放していく必要があります。園が所有する場所や設備、機能や人的資源などを積極的に地域に開放、提供していくことで、園への認知度や信頼感が高まり、園の存在価値も上がるものと考えます。

②若松第三地域包括支援センター業務

園は、会津若松市の委託を受け、門田地区、城南地区、大戸地区を対象に若松第三地域包括支援センター(以下「センター」という。)の運営を担当しています。センターは、在宅の高齢者やその家族を地域で支援する拠点として、介護等に関する様々な相談や成年後見制度の普及促進、高齢者虐待への対応、介護予防事業の実施などを行っています。

センターには、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーが配置され、介護だけでなく福祉、健康、医療など様々な分野から総合的に高齢者とその家族を支援しています。超高齢社会を迎えようとしている中、在宅で介護を受ける方は増加傾向にありセンターへの相談件数も増加しています。

園として、センター業務に適切に対応することにより、地域住民の方に「困ったことがあればセンターに相談すればいい。」という思いを持ってもらうことで、園への信頼感と園の存在価値が高まるものと考えます。

4.計画期間

長期経営計画の期間は、平成30年度から平成39年度までの10年間とします。なお、必要に応じて見直しを行います。

5.具体的な管理指標

次の4項目を具体的な指標とし、長期経営計画を管理していきます。毎年度の決算終了後、各指標を評価し、その評価内容を翌々年度の予算策定に反映していきます。

(管理指標)

項目 内容
(1)設備整備積立金 平成39年度決算値を1億円とし、将来は2億円
(2)経費に対する利益率 法人全体の投下経費(事業費+事務費+職員人件費)の2%以上
(3)利用者のサービスに対する評価 園のサービスに対し利用者による評価の数値化を図る。
(4)職員人件費の割合 収入(措置費収入+介護保険料収入+受託収入)の65%以内

(取り組み項目の一覧)

項目 内容
(1)持続可能な強固な財政基盤の構築 ①設備整備積立金のあり方
→○平成39年度決算終了後の積立額1億円
②園の8事業の方向性と利益額の目標値
→○投下経費(事業費+事務費+人件費)の2%以上
(2)利用者サービスの向上 ○園のサービスに対し利用者による評価の数値化
(3)職員の能力向上 ○人材育成計画の策定
(4)職員人件費の割合 ○収入(措置費収入+介護保険料収入+受託収入)に対する職員人件費の割合を65%以内
○職員採用計画の策定
(5)事務事業の見直し ①業務の改善
→○職員提案制度の制定
②情報公開制度の制定
(6)地域に開かれた施設として ①地域への還元
②若松第三地域包括支援センター業務への対応

平成30年3月 社会福祉法人 会津長寿園